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ハサップ(HACCP)とは?食品事業者に義務化された理由と対象規模の違い

ハサップ(HACCP)とは?食品事業者に義務化された理由と対象規模の違い

近年、食品の安全性を確保することが重要視されるようになり、企業に対して食品の製造過程における危害要因(ハザード)を分析し、重要な工程を連続的・継続的に管理することが求められるようになってきました。このような背景から、2018年に食品衛生法が改正され、2020年6月から一定規模以上の食品事業者に対して「危害分析・重要管理点(HACCP:ハサップ)」の導入が義務付けられました。

HACCPは、食品の製造工程のあらゆる段階で発生する可能性のある危害を把握し、特に重要な工程を重点的に連続監視することで、より確実な食品の安全性を確保することを目的としています。この記事では、HACCPの概要と義務化の背景などについて詳しく解説します。

HACCPとは?

まずは、HACCPとは一体何なのかを解説します。


危害要因分析重要管理点方式の略称

HACCPは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の頭文字を取った略称です。日本語では「危害要因分析重要管理点方式」と訳されます。

この手法は、食品の製造工程で発生する恐れのある生物的、化学的、物理的な危害要因を事前に分析し、それらの危害要因を除去または最小化するための重要な工程管理点(CCP: Critical Control Point)を特定し、継続的に監視することで食品の安全性を確保する手法です。

生物的危害 化学的危害 物理的危害
細菌、ウイルス、カビなど 農薬、洗剤、アレルゲンなど 金属、ガラス、プラスチックなど

このように、HACCPシステムは、食品の製造工程における危害要因を徹底的に分析し管理することで、食品の安全性を確保するのが特徴です。

食品の安全性を確保するための手法

HACCPは、食品の製造工程で発生する可能性のある危害を科学的に分析・評価し、重要な工程を連続的に監視することによって、危害の発生を未然に防止する食品衛生管理手法です。

この手法は以下の7原則12手順で構成されています。(手順1~5は、原則1~7を進めるための準備となります。)

手順/原則 内容
手順1 HACCPのチーム編成
手順2 製品説明書の作成
手順3 意図する用途及び対象となる消費者の確認
手順4 製造工程一覧図の作成
手順5 製造工程一覧図の現場確認
手順6/【原則1】 危害要因の分析
手順7/【原則2】 重要管理点(CCP)の決定
手順8/【原則3】 管理基準(CL)の設定
手順9/【原則4】 モニタリング方法の設定
手順10/【原則5】 改善措置の設定
手順11/【原則6】 検証方法の設定
手順12/【原則7】 記録と保存方法の設定

こうした手順を経ることで、製造工程の各段階で食品安全上の危害要因をコントロールし、最終製品の安全性を科学的に保証することができます。

HACCPの義務化の背景

HACCPは、食品衛生法の改正により、一定規模以上の食品事業者に対して義務化されました。この背景には、食品業界の国際化や食品の安全性確保がより一層求められるようになった社会的要請があります。

具体的には、以下のような出来事がHACCPの義務化につながりました。

  • 2001年の牛海綿状脳症(BSE)問題
  • 2008年の中国産冷凍餃子による残留農薬問題

このように、食品による健康被害が社会問題化する中、2020年の東京オリンピックにおいて日本の食の安全性を世界にアピールする狙いもあり、HACCPの考え方に基づいた予防的な取り組みが重要視されるようになりました。

HACCP義務化の対象事業者

HACCPの導入は、2018年6月に食品衛生法が改正されたことにより、従業員数が50名以上の「食品の製造・加工、調理、販売、飲食店などの食品を扱うすべての事業者」に義務付けられました。

一方、従業員数が50人未満の小規模事業者については、原則として義務化の対象外となっていますが、HACCPに沿った衛生管理が求められます。また、以下の「公衆衛生に影響が少ない(食品衛生上のリスクが低い)事業者」については、HACCPの導入は義務付けられていません。ただし、従来の一般衛生管理は必須となっています。

  1. 食品又は添加物の輸入業
  2. 食品又は添加物の貯蔵又は運搬のみをする営業(ただし、冷凍・冷蔵倉庫業は除く。)
  3. 常温で長期間保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生の恐れがない包装食品の販売業
  4. 合成樹脂以外の器具容器包装の製造業
  5. 器具容器包装の輸入又は販売業

HACCPの認証と資格

ここからは、HACCPの認証と資格の取得方法について解説します。

認証機関による審査を受けて認証取得

食品事業者がHACCPを導入するには、認証機関による審査を受けて認証を取得する必要があります。認証機関は、次の3種類があります。

  • 業界団体の認証機関
  • 民間の認証機関
  • 地方自治体の認証機関

認証審査では、食品事業者が作成したHACCP手順書の内容が適切かどうかを確認します。審査に合格すれば、認証が付与されます。認証の有効期間は通常3年から5年程度で、更新時にも再審査が行われます。更に、毎年1回継続維持審査により、HACCPの運用が適切に行われているかの確認も行われます。

認証を取得すると、「HACCP認証取得」などの表示ができるようになります。消費者から信頼を得やすくなるだけでなく、海外への輸出の際にも有利になるなどのメリットがあります。

関連する資格として管理者、指導員などがある

HACCPの取り組みを推進するため、様々な関連資格が用意されています。主な資格には以下のようなものがあります。

資格名 概要
HACCP管理者資格 HACCPの管理者としての知識や技術向上を目的とした資格です。
HACCP普及指導員 HACCPに関する知識を有し、HACCPの構築や検証を行うことができ、中小事業者のHACCP導入のニーズに応えられる人材です。
HACCPコーディネーター いわゆるHACCP実務者です。食品企業のHACCPチームの一員として、HACCP計画の策定、運用、検証などに携わります。
HACCPリーダー HACCPの構築やその衛生管理システムの運営を中心となって行うことができる者に与えられる資格です。

これらの資格は、それぞれ所定の研修を受講し、試験に合格することで取得できます。特にHACCPリーダーは、一定の実務経験が求められるなど、高度な知識と経験が必要とされます。

食品事業者は、事業規模や取り扱う品目に応じて、適切な資格を持つ人材を確保する必要があります。資格取得者を適所に配置することで、食品の安全性向上につながるでしょう。

HACCPの導入メリット

HACCPを導入することで、食品の安全性が向上するメリットがあります。一方で、経営面でも以下のようなメリットが期待できます。

  • ロスの削減
    • 工程の見直しにより無駄が減り、ロスコストを削減できる
  • 人件費の削減
    • 作業の標準化により、作業効率が上がり人件費を抑制できる
  • 製品の信頼性向上
    • 品質が安定し、クレーム対応コストが削減される
  • 従業員の意識改革
    • HACCPの理解を深めることで、従業員の食品安全への意識が高まる

このように、HACCPの導入は食品の安全性を高めるだけでなく、経営の効率化にもつながるのです。

HACCP導入の課題と対策

ここからは、HACCP導入の課題と対策について紹介します。

中小事業者への負担が課題

HACCPの導入には、初期投資や人材の確保などのコストがかかります。特に中小の食品事業者にとっては、その負担が大きな課題となっています。

具体的には以下のような点が挙げられます。

課題 内容
初期投資 設備の改修や手順書作成などに多額の費用が必要
人材の確保 HACCPに精通した人材の採用や社内教育が必須
専門知識の不足 HACCPの導入方法や運用ノウハウが不足している

このため、中小事業者に対しては、国や自治体から以下のような支援策が講じられています。

  • HACCP導入に向けたセミナーの提供
  • HACCP導入時に必要になる設備投資の一部助成
  • 優良な取り組み事例の横展開

中小事業者は、こうした公的支援を最大限活用することで、HACCPの導入負担を和らげることができます。

手引書やコンサルティングの活用が有効

HACCPの導入は、中小の食品事業者にとって大きな負担となる可能性があります。専門的な知識が必要とされることに加え、手順の遵守や記録の作成・保管など、作業負荷が増えるためです。

このため、中小事業者ではHACCPの導入支援として、国や業界団体が作成した手引書の活用が有効でしょう。手引書には、業種別の標準的な手順や記録様式の例が掲載されており、これを参考にすることで手間を省くことができます。

主な手引書 作成主体
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書 農林水産省

また、HACCPの実務経験が豊富なコンサルタントに相談し、サポートを受けることも有用です。手引書の解釈に加え、自社の実情に合わせた手順の立案や現場指導を受けられるためです。導入の負担を軽減するため、国や自治体の支援制度を利用することもおすすめします。

まとめ

HACCPは、食品の安全性を科学的に確保するための国際的な衛生管理手法です。日本では2018年の食品衛生法改正により、一定規模以上の食品事業者に導入が義務付けられました。

HACCPの導入が義務化されましたが、認証の取得は義務ではありません。しかし、HACCPを導入し適切に運用していることを外部に認知させるためにも、認証機関による審査を経て認証を取得することが有用です。

一方で、中小事業者への負担が課題とされています。手引書やコンサルティングを活用することで、導入がスムーズにできるでしょう。食品事業者にとってHACCPの適切な運用が求められています。

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